危険な「国家財政」と無謀な「日銀営業」

           20年度国債依存度64%、21年度15か月予算

 

20年度の国家予算は「当初予算」が約102兆円だが、合計3回の「コロナ対策補正予算」を組み、「歳出総額」はこれらから175兆円超となった。これは、19年度当初予算の1・7倍だ。したがって「国債発行額」も112兆円に膨張し、20年度歳出の「国債依存度」が約64%となった。

 これまで「単年度国債発行」の過去最高額は、09年度の約52兆円であったが、20年度は、その2倍以上だ。この国債依存度の拡大は、コロナ禍に拠る税収不足にもよる。当初予算の「税収見込み」は63.5兆円であったが、これが約55兆円に止まる。

では21年度の予算はどうか。これは「当初予算歳出額」が約106・6兆円で、3年連続で当初予算が100兆円を超える。ここには「コロナ対策予備費」の5兆円も含まれるが、「新規国債発行」が約43兆円、「国債依存度」が約41%だ。しかし当初予算とはいえ、この予算編成は「20年度第3次補正予算」を考慮した予算である。

 

国債および借入金現在高(兆円)

 

212月末実績

2年度末見込

三次補正予算ベース

普通国債

財投債

借入金・交付国債

政府短期証券

920.

111.

61.

120.

984.

120.

56.

130.

合計

1212.

1292.

 

したがって実態は、21年1月から23年3月までの「15か月予算」だ。それは20年度第3次補正予算」と「21年単年度予算」の「合計歳出総額122兆円超」で、15か月の大型予算だ。実は20年度予算の実態も、同様な15か月予算であったが、それでも約106兆円の15か月予算であった。21年度は、これより16兆円も大きい。

 このように20年の15か月予算は、21年度の15か月予算より小さかったが、それにも拘わらず、「20年度3回の補正後歳出」は175・6兆円と過去最高。それまでの過去最高予算は、19年度の101・45兆円であったが、20年度はその1・7倍となった。ところが21年度は「15か月予算」では122兆円である。

財政規律はどうなるか!ちなみに国家累積債務は、この表のとおりGDPの2・3倍ほどの1292・7兆円だ。かつて本欄で述べた「無利子100年国債」の発行がいっそう不可欠となった。コロナ禍の下での財政支出増大は、必要かつ止むを得ない。しかし先進国には例のないこの「膨大な累積債務」の後始末についても計画を立てるべきだ。政権は無責任にもこの点を放棄し、財務省も途方に暮れている。

 

                  どうする金融緩和策の後始末

 

金融超緩和策は、「物価上昇で経済成長」の目標を達成できていない。しかしこの政策により「日銀のバランスシート(貸借対照表)」が急拡大して、2012月には711・7兆円で、1012月の128・7兆円の5・5倍だ。とりわけ「国債保有額」は、1012月の76・7兆円に対して、昨年12月は544・6兆円と、10年の7倍以上となった。したがって金融機関から買い入れた国債の代価である「金融機関の日銀当座預金」は、10年の22・7兆円の21.4倍486・1兆円に膨張している。

 

日銀営業毎旬報告・貸借対照表から掲載(単位兆円、10億以下切り捨て)

 

国債保有額

当座預金(負債)

資産(負債)総額

20152

20172

20192

20212

267.556

416.897

473.598

537.513

181.037

327.475

383.211

486.120

316.703

484.108

558.976

710.564

 

また「コマーシャルペーパー」「社債」などの日銀買い取りも膨張し、加えて「貸付金額」も10年度の43・7兆円から、その2.5倍以上の111・4兆円となった。さらに株式関連が貸借対照表では36・5兆円と、10年度2・4倍に達している。

このような日銀の市場介入は、自由経済体制とは言えない危険な過剰介入である。この日銀の株式買い入れ額(上場投資信託ETFなどの買い入れ)は、時価総額で昨年12月には45兆円に達し、これまで最大の株式投資家のGPIFの投資を上回った。こうした「日銀による株式吊り上げ」は、実績を伴わない企業の株価の吊り上げなど、株式市場を混乱させる「官製相場」だ。また株価が下落した場合に、日銀の損失が膨大となる。

また先の「日銀の国債買い」も、深刻な問題だ。金融機関の「日銀当座預金」486兆円超に対して、日銀は利子を支払っていない。「ゼロ金利もしくはマイナス金利策」ゆえだ。しかしプラス金利さらには高金利となれば、日銀はどのように利子を支払うのか。日銀券の発行に拠るならば、「日銀券増発」と「インフレ」の悪循環に陥る。

世界の「コロナ禍」が終焉して経済が軌道に乗れば、これまでの異常な金融緩和策から、インフレや円相場の暴落と言う事態も生じかねない。その場合には、金利を上げざるを得ない。そうでなくとも金融機関は、ゼロ金利策によって営業が難しくなり、ゼロ金利解除が「焦眉の急」問題となっている。「日銀営業毎旬報告」の「貸借対照表」によると、この表のとおり「国債保有額」「当座預金」がうなぎ登りに増大している。