株価と企業利益の異常な乖離----ファンド経済のカジノ的危うさ

アルケゴス取引に拠る損失  

世界的な「コロナ禍」や「異常な金融緩和」に加え、米中摩擦や両国の景気回復、さらには「アメリカ連邦政府財政のデフォルト(債務不履行)」の可能性、「中国大手企業(不動産開発会社の恒大集団)の社債デフォルト」の危惧などから、近年の株価は大きく変動している。しかしそれらの背景を考慮しても、総じて異常な「根拠薄弱の日本株価激動」と言える。

 

次表のとおり2015年度の全産業の経常利益指数(2010年度=100)は156で、日経平均株価は1万円ほどであった。そして近年で経常利益が最も高かった2018年度は、それぞれ19222000円ほどとなった。

 

  経常利益指数2010年度=100と日経平均株価および株価指数2000年度=100

   *財務省「法人企業統計」および財務省大臣官房総合政策課「主要経済指標」より算出・作成

年度

2015

2018

2019

2020

202113

202146

経常利益(全産業

日経平均株価

 株価指数

156

10006

112

192

22310

250

164

21697

243

145

22750

132

36

28987

255

36

28962

324

 

しかしその後は経常利益が低下し続けているのに、株価は逆に上昇し日経平均が3万円超えの期間もあった。2021年に至っては経常利益が2018年より80%も低下しいているのに、株価は3万円ちかい高額で、18年より30%ほど高く、2000年度の2.53.2倍にも達している。

 

このような株価の異常な激動の背後には、「ファンド取引」が推測され、これが金融市場および経済全般に混乱をもたらすことが危惧される。たとえば今春の「アルケゴス・キャピタル・マネジメント」に発する「金融問題」は、「ファンド経済」の危うさを象徴している。スケールは違うが、サブプライムローンのリーマンショックと同様だ。

 

20072009年にかけて、米国の「サブプライムローンの焦げ付き」とその「証券化商品」の価格暴落によって、同期間にメリルリンチをはじめ世界の50行が倒産に瀕し、金融市場と各国経済が大混乱となった。アルケゴス問題も「世界的な金融緩和マネー」が絡み、同様な陥穽に陥った。

 

 米投資会社アルケゴス関連の損失額として、野村ホールディングス」は約3100億円(28.7億ドル)を計上。また三菱UFJ証券ホールディングス」も英国の子会社で3億ドル(約330億円)程度の、「みずほフィナンシャルグループ」も、同様に100億円規模の損失だ。

 

同じく世界の金融機関も、アルケゴス関連で大損失だ。最も金額が大きい「クレディ・スイス・グループ」は50億スイスフラン(約5900億円)。米の「モルガン・スタンレー」は9億1100万ドル(約1000億円)、スイス金融最大手の「UBSグループ」も8億6100万ドル(約930億円)の損失。

 

これら各社はアルケゴスに、デリバティブ(金融派生商品)取引や与信を提供していたゆえ、世界の主要金融機関はこのように1兆円を超える損失となった。3月下旬にアルケゴスの投資先の銘柄が急落して、アルケゴスの運用が行き詰まり、それゆえ金融機関の保有担保価値も急落し、含み損を抱える事態に陥った。

 

損失の拡大理由

アルケゴスは少数の特定顧客の資金を運用する、比較的小規模な「ファミリーファンド」で、年金基金や金融機関の資金を運用する「ヘッジファンド」より規制が緩い。アルケゴスはこれを利用して、小規模ファンドながら多額の資金を運用してきた。

 

このようなファンドが、投資資金を膨らませる契約が「トータルリターンスワップ」だ。それは、金融機関に比較的高い手数料を払って資金を調達し、その資金で投資を行う。アルケゴスの運用資産は100億ドル前後だが、この契約により実際の運用規模は1000億ドル超だという。

 

 ところがアルケゴスが集中投資していた「アメリカのテレビ局会社」が増資を発表し、この株価が下落してアルケゴスは多額の損失を被った。 それゆえ米大手証券などは、アルケゴスからの資金回収を懸念し、アルケゴス保有の「中国インターネット検索大手」や「中国通販大手」の株を大量に売却した。これによりアルケゴスの損失はさらに膨らんだ。

 

ばら撒かれるリスク

2007年に世界的金融不安を引き起こした「サブプライムローン」は、「低所得者向けの住宅ローン」だが、「信用度の低い高金利ローン」であり、総額1.3兆ドルであった。住

宅ローン会社は、このリスクを減らすために、多くのサブプライムローンを「証券化」し、これを証券会社に売った。

 

証券会社はそのリスクを分散すべく、これらの「サブプライムローンを組み込んだ金融商品」を創って、世界の金融機関やファンドに売却した。この金融商品が、総計1兆ドル(当時の為替で115兆円)。しかし、この金融商品を買ったファンドや金融機関の損失は潜在的に大きい。結局のところ世界の銀行や証券会社およびファンドは、総額で1.2兆ドル(130兆円超)の損失を被った。ここに「ファンド資本主義」の危うさは明白だ。

 

かつて破綻したファンド「ロングターム・キャピタル・マネージメント」は、投資家から募った22億ドルを担保に、銀行から1250億ドルを借り入れ、デリバティブで運用したが、その投資契約額は、集めた金額の600倍ほどの1兆2500億ドルにのぼった。

 

これは極端な例だが、ファンドのやり方を象徴している。100兆円のサブプライム関連商品も、少なくともその何十倍かの取引の「てこ(レバレッジ)」となっていたから、これが暴落して、そこで契約された取引も破綻し、損失も厖大となったのである。