「少子高齢化社会」と「外国人労働者問題」の行方

少子高齢化の加速化

総務省による25年1月1日現在の「日本人」の人口は、前年より約90.8万人減(前年比0.75%減)の1億20653227人である。他方で「外国人」は、前年より約35.4万人増(前年比10.65%増)の3677463人。これら双方を合わせた総人口は、前年より約55.4万人減(0.44%減)の1億2433690人となり、外国人の加速的増加が、日本人の減少分をかなり補っている。

 

 日本人の人口は09年をピークに16年連続減少で、最近4年連続の過去最大減少である。24年の子供出生数は、686061人で9年連続減少し、ついに70万人を割った。また「合計特殊出生率」も過去最低の1.15に低下。他方で外国人の増加は3年連続で、コロナの23年から毎年10%以上増えている。

 

ちなみに24年の日本人の婚姻数は485063組、平均初婚年齢が夫31.1歳、妻29.8歳と高齢化している。また離婚数は185895組で前年より増加。さらに年齢別人口は、1564歳までの「生産年齢人口」が、前年より505950人減少の71235169人で、日本人の人口全体の59.4%となった

 

他方で65歳以上の高齢者も、1万9041人減の35692697人だが、全人口の29.58%となった。また014歳の子供人口は、383579人減の13725356人で、全体の11.38%である。このように「少子高齢化」と人口減少が加速化してきた。それゆえ「外国人労働者」の増加も加速する。24年に「日本人の人口」が増えたのは東京都だけであるが、「外国人労働者」は全都道府県で増加した。

 

外国人の推移と外国人労働者の産業配置

202410月末時点の「外国人居住者」は367.7万人だが、そのうち「外国人労働者」は230万人を超え、2007年の統計開始以来の過去最多を更新した。これは10年前の14年の約68万人の3倍ほどの規模である。また「外国人を雇用する事業所数」も、24年に前年比7.3%増の約34万箇所で、過去最多となった。

 

(表1)在留資格別外国人の推移 (単位万人)    *厚生労働所の資料より作成

 

2014

2017

2019

2020

2022

2023

2024

身分

技能実習生

専門・技術

33.9

14.5

14.7

45.9

25.8

23.8

53.2

38.4

32.9

54.6

40.2

36.0

59.5

34.3

48.0

61.6

41.3

59.6

62.9

47.1

71.9

身分」身分に基づく在留資格者   「専門・技術」専門・技術分野による在留資格者

 

したがって表1のとおり、これまでは最も多い在留資格者は「身分に基づく在留資格者」だが、しかし24年には「専門的・技術的分野の在留資格者」が最も多くなった。前者は日本人の配偶者等、永住者、永住者の配偶者などに該当する外国人ある。労働力不足が「外国人の専門職人材の増加」を急速に促してきた(厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況まとめ」2024年10月時点)。

 

とりわけ製造業における外国人労働者は、2014年の約27万人から24年には60万人と10年間で倍増した。同様に「宿泊業・飲食サービス」を含む「サービス業全体」は、約20万人から63万人へと3倍以上となっている。さらに同期間に「建設業」は8.5倍、「医療・福祉関連」は12倍近くと急増している(表2)。今後もこの双方における外国人労働者は、急激に増えるであろう。

 

また外国人労働者の受け入れ増加に伴い「職業紹介や労働者派遣業」においても、外国人労働者の需要が増え、現在の約3倍の54万人が必要になるという。外国人労働者は、同じ国の出身者による仕事紹介のほうが、日本人よりマッチング精度が高いからであろう。

(表2)産業別外国人労働者数(単位万人)

 

2014

2020

2022

2023

2024

製造業

サービス業

卸売・小売業

建設業

医療・福祉

27.3

19.5

 9.2

 2.1

1.0

48.2

48.0

23.2

11.1

 4.3

48.5

50.5

23.8

11.7

 7.4

55.2

55.5

26.4

14.5

 9.1

59.8

62.7

29.8

17.8

11.6

厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』(202410月時点)より作成

 

外国人労働者母国の少子高齢化とAI失業問題
 日本の全労働者数の約6781万人のうち、3%強の2302587人が外国人労働者である。先にふれたとおり東京都だけが日本人の人口が増えているのに、外国人労働者の割合が最も大きいのも東京都で、14人に1人の7%が外国人労働者となっている。

 

 たとえばファミリーマートでの外国人労働者は全体で2万人など、コンビニ4社の外国人労働者の割合は13%である。関西でも特別養護老人ホームなど20の介護施設を運営する「晋栄福祉会」は、外国人労働者185人で16%と多い。他方でこの割合が少なかった地方も、急激に増えている。2009年から2024年間に沖縄県が8.1倍、鹿児島県7.8倍、北海道7.0倍となった(朝日新聞25年8月25日)。

 

 日本の外国人労働者の主な出身国は、多い順に並べると次表のとおりで、ベトナムをはじめアジア人が圧倒的である。しかしアジアの殆どで「合計特殊出生率」が、「人口を維持できる水準2.1」を切っている。したがって人口高齢化が、かなり急激となると予測される。とりわけ中国は1.0024年の日本の1.15より小さい。

 

(表3)出身国別「日本の外国人労働者」の労働者数・出生率・高齢化率・倍加率

 

ベトナム

中国

フィリピン

ネパール

インドネシア

ブラジル

労働者数

出生率

高齢化率

倍加年数

57.1

1.91

8.6

17

40.9

1.00

14.3

23

24.6

1.92

5.3

28

18.7

17.0

2.1

7.0

24

13.6

1.62

 

・労働者数:出身国別日本の外国人労働者(万人)  ・出生率:合計特殊出生率(23年)  

・高齢化率:65歳以上人口の割合(23年)・倍加年数:高齢化率7%から同14%に達するまでの年数

 

また最も急激な高齢化の日本でも、高齢化率が7%から14%に達するのに24年かかったが、中国をはじめ多くのアジア諸国も同程度の「倍加年数」であり、ベトナムは17年、タイは18年とさらに短期間だと予測される(表3:日本総研「アジア・マンスリー」NO.293FUU「外国人労働者の受け入れ状況2025年最新版]などから作成)。

 

したがってアジア人労働者の「日本への送り込み」も、遠からず限界に達する。日本の外国人労働者の需要は2030年に419万人となるが、供給は342万人で77万人の外国人労働者が不足するという予測である(日本国際協力機構JICA2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた調査研究」)。

 

このような予測や労働力不足から、政令指定都市の4割強が「海外の自治体や大学からの人材受け入れ」に関する「国際交流」を結んでいる。また外国の人材を採用する地方自治体もある。当然ながら「海外ルーツ」の子供数も増え、日本の小中高に通う外国籍の児童生徒は、04年からほぼ倍増して14.9万人となった。また「海外ルーツ学生の入試枠」を設ける大学も、20大学以上となっている。

 

さて「外国人労働者の問題」がこのように広がっているが、他方でこれに反する予測もある。それは通常の仕事が今後、AIによって代われる可能性だ。OECD(経済協力開発機構)の推計によると、先進諸国の平均で、労働人口の10%がAIに代替され、日本では労働人口の15%の約1000万人が代替されるという。

 

 したしたがって労働人口不足どころか、膨大な失業者社会となり、外国人労働者を導入する余裕も必要性もなくなる。要するに日本経済が今後「外国人労働者不足」で困窮するか、それとも大失業社会で沈滞するかの何れかということだ。

 

定常状態的経済と地域共同体的社会へ!

これら双方を防ぐには、これまでの「経済主義思想」を転換し、自然環境をも重視する「定常状態的経済」および「地域共同体的社会」に向かうほかないであろう。それゆえボランティアその他のNPO、消費者団体・生協さらには企業の「フィランソロピー(慈善活動)」「メセナ(文化・芸術活動支援)」などがいっそう重要となる。

 

これらが地域社会、国内、国際社会など広範囲に及び、現在の「市場経済」と「民主主義政治」からなる「社会システム」の機能不全や欠陥を補うであろう。他方AIには失業ばかりでなく、犯罪など様々な弊害が伴うゆえ、慎重かつ適切な利用を心掛けるべきである。

 

 ちなみにAIを使用する人口割合は、日本が26.7%、アメリカが68.8%、中国81.2%であり(総務省情報通信白書2024年)、日本はAIの利用や活用が遅れている。それゆえ政府は、これを促すべく内閣府に「AI戦略本部」を設置し、能率をあげさせ経済発展を促す。しかしAI利用の「ソーシャルメディア」による偽情報や社会分断をあおる投稿も目立つ。

 

 またアメリカIT大手は、これにより膨大なデータを集め、富と権力を集中的に握っている。中国ではAI技術で国民への監視を強めている。さらに子供から大人までAIの虜となれば、人間本来の想像力や感情を麻痺させられる。

 

こうして見ると日本の「AI利用の割合」が低いことを、必ずしもマイナスに捉えるべきではない。内閣府の「AI戦略」は、これらを十二分に検討すべきである。根本的には「経済主義思想」を転換すべきである。もはや期待されるほどの「経済成長」は、自然および人間の双方の条件から不可能であり、それを敢えて追求すれば、人類の破滅に繋がるであろう。